クルマの燃費は大きな転換点、JC08モードとWLTCモードの違いを徹底解剖。

クルマの燃費は大きな転換点、JC08モードとWLTCモードの違いを徹底解剖。

クルマの燃費表記は、JC08モードからWLTCモードに変更となった。

これまでの燃費表記として使われてきた「JC08モード」は役目を終えて、これからは「WLTCモード」に変更となっています。この燃費表記の変更は、2018年10月1日より表示の義務化が開始されているので、現在では「WLTCモード」に変更済みです。
※2021年1月1日に、JC08モードで測定済の燃費表記が完全に廃止されている。

皆さんも同じかと思いますが、クルマのカタログ燃費表記について「カタログの数値ってあてにならないよね」と思っている人が多いと思いますし、カタログの燃費表記と実際にクルマに乗って走っているときの実測値(体感)とはかなり乖離していることを経験している人も多いはずです。

ちなみに私の住んでいる地域は「丘」「高台」などが多い地形(「丘」や「台」がつく地名も多い)のため、坂道が多く燃費が悪くなるのです。
そのため、ディーラーでクルマの燃費のことを聞くとカタログの燃費のほかに「この地域は坂道が多いから・・・」といって営業マンの実測値(体感)ともいえる数値も教えてくれることもありました。
きっとトラブルというか、クレームになることも多いのだと思います。営業マンのいう数値はカタログ値の半分以下でしたから。。。

そのようなこともあり、私自身も疑心暗鬼であまり信じていなかった「カタログ表記の燃費」ですが、それでも少しでも実測値に近い数値を記載してほしいとの願いもあります。。。なので、カタログに記載の燃費はどこまで信用できるのか、、、といった疑問が生まれるのは当然だと思っており、この「燃費」について掘り下げて考えたいと思います。

・燃費のいい運転の仕方とは?
・クルマの燃費表記の変遷。できるだけ実測に近い燃費表記とは?
・これまでのクルマの燃費表記のJC08とは、具体的にどのような数値か。
・新たな燃費表記のWLTCモードとは、何をどのように表した数値か。
・燃費表記JC08モードとWLTCモードの違いをまとめ。

今回の記事では、こんな疑問を解消させていきたいと思います。




燃費が良くなる運転の仕方とは?

この私の経験からもわかる通り、素人も体感で気が付いていて、ディーラーも非公式ながら教えてくれたりもすることから「カタログの燃費の数値は参考程度にしかならない。」ということは周知の事実です。

また、、、これと同じくらい「燃費はクルマの使い方や運転方法によって変わる」ことも周知のことですよね。

例えば、以下のような運転の仕方に気を付けると燃費よく走ることができます。

■燃費の良い走り方
・クルマの発進時のブレーキからアクセルへの切り替えはゆっくり行うと燃費がよい。
・減速(街中の信号停止も)するときは、エンジンブレーキを使うと燃費がよい。
・高速道路で80km/hくらいで安定走行すると燃費がよい。
・エンジンをかけたらすぐに発進(暖機運転しない)する。
ようは、「 一定速度で走行し、急ブレーキ・急加速をしない運転」が燃費向上につながるということです。

あとは、勘違いしている人も多いかも知れませんが、暖気運転は燃費は悪くなります。
昔のクルマは、特に長距離運転をするときなど運転開始する5分前にエンジンをかけて暖めておいたりしましたね。
でも、これってアイドリングと同じなので、、、イマドキですとアイドリング時はエンジンストップしないと燃費が悪いってことですよね。

では、、、燃費の良い走り方について、少し掘り下げて解説すると、エネルギーの消費というのは、「始動(起動)直後に多く消費する」ものです。
身近な話に置き換えてみると、家庭の照明やエアコンなどの「スイッチのオンオフを短時間で繰り返すと電気代がかかる」ことは知っている人も多いはずです。ようは、これと同じことです。

クルマでいうと、エンジンの始動直後は、エンジンが動くための準備(エンジンを暖めて滑らかに動くよう)にたくさんのエネルギー(燃料)を消費するため、エンジンが十分に暖まる前に目的地に到着してしまうような短距離走行が多い「街乗り」では、燃費効率がかなり悪化しちゃいますよね。
(それなら暖機運転したほうがいいの?と思われがちですが、暖機運転のほうが燃費が悪いです。)


また、同じ理由で、運転の仕方でも「急発進や急ブレーキ」を繰り返すような荒い運転をする人(走り屋とかで意図的にしている人は、、、燃費を気にしていないと思うので、別扱いで)も燃費効率を悪化させますね。

それと、「渋滞」も燃費を悪くさせる要因ですよね。そのため、渋滞が起こりやすい道路を運転することが多い人も燃費が悪くなりますので、「渋滞する時間帯をずらして行動する」「渋滞する道路は避けて移動する」などを心がけると良いかもしれません。

最後にエンジンの特徴による違いです。
何となく、ハイブリッドが燃費がいいと思っている人も多いと思いますが、実はエンジンの種類によって得意な走行と不得意な走行というのがあり、これらも燃費効率に大きく影響してきます。

ディーゼル車:ディーゼル車は高速走行を得意としています。
ハイブリッド:電気とガソリンを使い分けるハイブリッドは、ゴー&ストップの多い市街地、いわゆる街中走行を得意としています。



クルマの燃費表記の変遷。できるだけ実測に近い燃費表記とは?

モード表記適用年概要
10・15モード燃費表記1991年に制定され、2012年まで使われていた。10・15モードは市街地を想定した10項目の走行パターン(20~40km/hで複雑な加減速など)と郊外を想定した15項目の走行パターン(40~70km/h)で、1リットルあたり何キロメートル走行できるかを測定したもの。ホットスタートのみを想定。
JC08モード燃費表記2011年からJC08モード表示を開始。2020年9月まで使われていた。日本独自基準。1リットルの燃料で何キロメートル走れるかをいくつかの走行パターンで測定。このJC08モード燃費でも実燃費はカタログ燃費の6~7割程度の水準。ホットスタートとコールドスタートの両方を想定。
WLTCモード燃費表記2018年10月から徐々に導入がされており、2020年9月以降には完全移行実際の走行状況を想定して、車種ごとに3つのモード、「市街地モード」、「郊外モード」、「高速道路モード」を設定して燃費表記する。コールドスタートのみを想定。

これまでのクルマの燃費表記のJC08とは、具体的にどのような数値か。

まずは、これまでの燃費表記である「JC08と何か?」から振り返ります。

JC08モード(ジェイシー ゼロハチモード)の特徴をあげると以下の3つになります。
・1リットルの燃料で何キロメートル走行できるか。
・燃費の測定方法は、自動車をいくつかの走行パターンで測定する方式。
・エンジンが温まった状態からだけではなく、冷えた状態からもスタートし、細かな速度変化を伴って計測
・車体重量に「2名乗車」を想定して測定する。
・日本独自の検査基準。

もともと、普通自動車の燃費は、運輸省(現:国土交通省)が1991年(平成3年)に制定した「10・15モード燃費」により測定されていましたが、カタログ数値と実測の乖離を回避して、より実測値に近づけることを目的として「JC08モード」に変更されました。



新たな燃費表記のWLTCモードとは、何をどのように表した数値か。

新たな燃費測定法である「WLTC」(Worldwide-harmonized Light vehicles Test Cycle)は「乗用車等の国際統一試験法」とされ、2017年中頃から一部の車種にWLTCモードが適用され始め、2018年(平成30年)10月1日から日本国内で新たに発売される車両は、輸入車を含めてWLTCモードでの燃費表示が義務化されました。

2020年9月以降はJC08モードの記載はなくなり、WLTCモードに完全移行され、WLTCモードで計測された燃費のみがカタログに記載されるようになりました。

WLTCモードの測定試験の特徴は、以下となる。
・車体重量に「1名乗車+荷物(積載可能重量に15%増加する)」をプラスして測定する。
・車種ごとに3つのモード、「市街地モード」、「郊外モード」、「高速道路モード」が設定されている。
・エンジンが冷えた状態から試験をスタートする「コールドスタート」を採用。
・アイドリング時間を短くして測定する。

【注記】
車体重量:JC08モードでは、2名乗車を想定していたが、WLTCモードの「1名乗車+荷物(積載可能重量に15%増加する)」のほうが重い計算となっている。
エンジン状態:JC08モードでは、自動車のエンジンが温まった状態で試験する「ホットスタート」を考慮していたが、世界的には10・15モードとの比較となり、10・15モードのホットスタートより過酷な条件となる。

この燃費表記により、10・15モードやJC08モードに比べ、より過酷な条件での測定となるため、従来の計測モードよりも実際の走行条件に近い状態で測定されることになる。そのため、従来の計測方法よりも実燃費に近い値で測定できるとされているようです。

この3つのモードは、以下のような走行モードを想定しています。

●市街地モード:信号や渋滞等の影響を受ける比較的低速な走行
●郊外モード:信号や渋滞等の影響をあまり受けない走行
●高速道路モード:高速道路等での走行

ところで、、、WLTCと合わせて「WLTP」という用語もあります。
この「WLTP」は「Worldwide harmonized Light vehicles Test Procedure」の略で、「乗用車等の国際統一排ガス・燃費試験法」を意味しています。
WLTCとWLTPの日本語訳では、WLTPに「排ガス・燃費」が追加されていますね。

日本は世界的に採用されている、いわば世界標準の燃費表記の「WLTCモード」を採用することで、排ガスや燃費の試験の効率化を図ったようです。それは、そうですよね。CO2排出削減は、世界的な問題であり、京都議定書で日本が世界に先駆けてCO2排出削減を提言してから、なかなか進んでいないため、これから巻き返しをしていかないといけない状況に追い込まれていますから。。。

ようは、世界標準の燃費表記とすることで、一度の排ガス・燃費試験で「WLTCモードを採用している多くの国々」での認証に必要となるデータを取得できることになります。



MINI CLUBMANのJC08モードとWLTCモードの比較



では、最後の最後となりますが、MINI CLUBMANの「ガソリンエンジン/ハイオク」のマイナーチェンジ(後期型:2019年10月~)のJC08モードとWLTCモードの比較をしてみましょう。

グレード 燃費 エンジン
(出力 / トルク)
JC08 WLTC
MINI クラブマン
ワン
7速DCT/2WD
16.3km/L 14.9km/L 1.5L 3気筒
ターボ
102PS 180Nm
MINI クラブマン
クーパー
7速DCT/2WD
16.7km/L 14.7km/L 1.5L 3気筒
ターボ
136PS 220Nm
MINI クラブマン
クーパーS
7速DCT / 2WD
14.0km/L 2.0L 4気筒
ターボ
192PS 280Nm
MINI クラブマン
クーパーS ALL4
8速AT / 4WD
13.3km/L
MINI クラブマン
ジョンクーパーワークス
8速AT /4WD
13.7km/L 12.1km/L 2.0L 4気筒
ターボ
306PS 450Nm



このようにJC08モードとWLTCモードを比較するとWLTCモードの燃費のほうが2~3Km/Lくらい値が低くなっていることが分かりますね。この分だけ実測値に近い値になっているといえます。


燃費表記JC08モードとWLTCモードの違いをまとめ。

日本では、2011年からの燃費表記の変更となり、約10年での変更です。
この10年でハイブリッドや電気自動車が当たり前に街中を走る時代になっており、新たな燃費基準を導入するのは当然の流れかもしれません。

ここで、JC08モードとWLTCモードの計測方法の違いをまとめると以下のようになります。
日本独自基準のJC08モードがあることで、少しわかりにくくなっていますが、全体的にWLTCモードでの試験のほうがクルマにとって」過酷な条件となっており、実際の燃費に近い表記となっていることが想定できます。

【JC08モードとWLTCモードの主な違い】

・車体重量をより実際に合わせて重くして測定する。
・コールドスタートのみの表記とする。
・アイドリング時間が短く設定(JC08モードに比較して)されている。
・利用シーンを想定した3つのモード(市街地、郊外、高速道路)で測定する。
 ※世界基準でのモードは4つあり、日本では「超高速モード」を場外している。
  超高速モードは、最高速度で走り続けるアウトバーンを想定しており、日本にはないため。
WLTCモードになることで、より過酷な条件での燃費試験となることが分かった。
その結果、JC08モードからWLTCモードに変わると、燃費表記は実測値に近くなるのか? 

国土交通省と資源エネルギー庁が共同で行っているワーキンググループが発表した資料によると、これまでのJC08モードで測定すると「燃費の良いクルマ」とされてきていた、ハイブリッド車や軽自動車(アイドリングストップ機能付)などでは、WLTCモード燃費は悪化する。具体的には燃費効率が、30㎞/L超のクルマでは、5㎞/L以上悪化することが分かっている。

主な要因としては、WLTCモードがコールドスタートで試験を開始するため、エンジンが暖まっていない状態では、オイル粘度が増加し摩擦損失が増大する。また、ハイブリッド車だと、低速時に電気(EV)で走行するため、ある程度高速になった状態でエンジンに切り替わることで、エンジンの暖気がされていないままとなり悪化しやすくなるようです。

また、JC08モードに比べるとアイドリング時間を短く設定しているため、これまでアイドリングストップで燃費を稼いでいたクルマは軒並み燃費が悪化しています。
これは、また矛盾を感じるけれど、アイドリングストップ機能を搭載しないクルマのほうがWLTCモードでは燃費が良い結果がでることもあるよう。