これからのMINIの電動化について考えてみる
- 2022.01.29
- EV MINI

MINIの全車種が電動化(EV化)されることが決まっていて、もう近い将来に迫っています。
まずは、来年2023年から生産が開始される3ドアとCROSSOVERのフルEVの新型モデルは、2025年から導入が始まっていくようです。
そして、2030年代初頭には、MINIの全車種は完全電気自動車(フルEV)へ移行する計画にあり、これは、BMWグループで最初のフルEVブランドになることを指しています。
なお、ここでBMWがいう「フルEV」は、「BEV(バッテリーEV)」として記載しています。
※最近は「BEV」などの略語が多く、わかりにくいですよね。「HV・PHEV・PHV・FCV・EV・BEV・HEV」の違いについて後述します。
これからの時代を考えると「完全電気自動車(フルEV)」は、当たり前の流れであり、すべてのクルマが「地球環境にやさしいクルマ」にならないと意味がない。
そのため、「買う側」も「売る側」も含めて「地球環境にやさしいクルマ売れない時代」だと言い換えできると思う。
そんなことで、これからの「電動MINIについて」「そもそもの電気自動車ってどんな種類があるの?」「どうすれば電気自動車が普及していくの?」「電気自動車の充電ってどうすればいいの?」などなど、、、あれこれ調べて・あれこれ考えてみたので、、、ここで紹介していきます。
完全電気自動車とは。
まず、完全電気自動車(フルEV)について考えてみます。
BMWが目指すMINIの完全電気自動車(フルEV)の在り方は、技術的には、BMWでも採用しているBEV(バッテリーEV)で導入されていくでしょう。
現行モデルのMINIのEVモデルは、CROSSOVERのPHEV(プラグインハイブリッド)の1車種になり、これは「ハイブリッド=半分電気で半分が内燃機関(ガソリン)」のクルマです。
そのため、BMWは、このCROSSOVERのハイブリッドと区別し、更に環境により良いクルマをアピールする必要があり「完全電気自動車(フルEV)」と表現しています。
なぜ、アピールする必要があったのでしょうか、、、その背景には、いったい何が。
その答えの一つは、「2021年3月17日に実施したBMWの年次総会」での以下の発言にも表れています。
『MINIブランドは2020年の販売台数は29万2582台で、2019年の34万7465台と比較するとマイナス15.8%という数字だった』
ようは、、、、MINIブランドでさえも売れないのです。地球環境に適していないと。
しかも、なるべく早くに完全電気自動車(フルEV)に切り替えする必要があります。
「プジョー E208」「フォルクスワーゲン e-Golf」などにコンパクトカーの「EV」市場のシェアを奪われる前に。。。。
「一歩でも早く、他社に先行しておかないと、、、、」といったBMWの焦りも感じますよね。
また、このほかの理由は、、、もう一つの答えとは、いったい何でしょうか。
それは米国をはじめ、欧州各国にも広がった「ハイブリッド外し」「TOYOTA潰し」ですね。環境適合車として世界を席巻したハイブリッドカーですが、世界的な脱酸素の動きの加速から、「ハイブリッドは電気自動車にあらず」といった風潮になってきています。
ゼロエミッションなんかが、そうですよね。
まー、確かに、内燃機関を積んでますよ、ガソリンも使っているし、排気ガスも出ちゃうからね。
※ゼロエミッションについては、こちらの「3.1. ゼロエミッション(Zero Emission)とは」で説明しています。
そんな、こんなの背景があってのことで、BMWは「MINIの全車種を完全電気自動車(フルEV)へのロードマップ」として発表したのでしょう。こういった背景が分かってくると、考え方やものの見方が変わってきますよね。
■MINIの全車種を完全電気自動車(フルEV)へのロードマップ(再掲)
2021年:BMWは、2030年代初頭にMINIの全車種を完全電気自動車にすると発表。
2023年:完全電気自動車の新型クロスオーバーが発売予定。
2025年:内燃機関(ガソリン・ディーゼル)の最終モデル発売予定。
2027年まで:すべてのMINIモデルの50%以上がEV化する計画。
2030年代初頭:MINIの全車種が完全電気自動車へ移行する。
MINIが大切にしてきたレーシングカー魂、、、、エンジン音とその振動とエキゾーストを捨てて、、、
内燃機関を搭載しない=エンジンがない。モーターで静かに走るクルマ。
エンジン音も振動もエキゾーストもなく、少々味気なさを感じるとは思うけれど。
それでも、、、間違いなく地球環境には優しいクルマ。
これからの時代は、こういうクルマでないと売れません。
あっ、、、ちょっと話はそれますが、、、「F1」もなくなっちゃうのかな。
だって、、、「F1」を電気自動車で静かに、、、、って、迫力がなく、それこそ味気ないですよね。
えー--っと、それでは、BMWの完全電気自動車に話を戻します。
BMWは、まず「3ドアとCROSSOVER」の次期モデルを2025年に予定しており、完全電気自動車(フルEV)のBEV(バッテリーEV)モデルとして導入されるようです。
いいな「3ドアとCROSSOVER」は、、、、Clubmanでは、、、完全電気自動車(フルEV)は、まだ先なのか。
早く、Clubman にもフルEVモデルが追加されないかな。。。
そんなこんなで、、、これからも「BMWの動向」に目が離せません。(突然、Clubmanも次期モデルを2025年にフルEVで発売!!?なんて発表することを心待ちにしている人です。)
クルマ王国が集う欧州各国の脱炭素とEV化のお国事情
皆さんが、「脱炭素」といえば、まず最初に思い浮かべるのは何になりますか?
私が真っ先に思い浮かべるのは「石炭火力発電等による温室効果ガスの排出をどのような施策で温室効果ガスの排出を削減」していくのかです。
そこで、ここでは欧州各国の電力発電における電源構成比率から透けて見える「脱炭素/カーボンニュートラル」に向けたお国事情のお話です。 欧州各国のうち、自動車産業を中核としている国々はどのようにして「脱炭素」を達成しようとしているのか。その辺りを掘り下げてみます。
なぜ、ここで「脱炭素/カーボンニュートラル」やら「電源構成比率」やらが関係してくるかと申しますと、以下の理由により二酸化炭素(CO2)の排出を抑制する必要があり、自動車業界全体が抱えている大きな課題だからです。
・地球環境が二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスが増加したことによる悪影響で温暖化が加速していること。
・内燃機関を搭載したクルマが排出する排気ガスは大量の二酸化炭素(CO2)を含んでいること。
・クルマを作るのに大量の電気が使われていて、その発電も石炭火力発電だとさらに二酸化炭素(CO2)を排出すること。
・石炭火力発電は、発電効率が高く、地球環境には悪いけど、低コストで発電=電気が安く使えること。
では、、、ようやく本題に。欧州各国のお国事情です。
まずは、フランスから。
フランスの脱炭素と発電の状況
フランスの脱炭素戦略は、「2040年までにガソリン車とディーゼル車の販売を禁止する」方針を発表しています。
となると、、、フランス車の代表格の、、、ルノー、シトロエン、プジョーなどは、内燃機関(ガソリン・ディーゼル)を搭載するクルマを販売できなくなるので、全面的に電気自動車や燃料電池車へのシフトが必要です。
また、フランスの発電の状況は、、、どうでしょうか。
フランスは原子力中心の発電構成です。原子力の発電比率は7割以上にもなり、原子力に頼り切っている状況で、世界で最も原子力による発電比率の高い国です。
フランスが原子力による発電比率が高くなった要因は1970年代のオイルショックに遡ります。ようは石油産出国の輸出調整の影響で原油価格が不安定になることに振り回されないための戦略だったのでしょう。
そして、原子力発電は「二酸化炭素を排出しない」ので、脱炭素は実現可能なため、欧州では、脱炭素社会の実現に向けて、EU(ヨーロッパ連合)は、「原子力発電は持続可能な経済活動」として投資を促す方針がでているようです。
その一方で、「脱原発」を唱えるドイツなどの反対派もおり、意見が真っ二つに割れているようです。
EUは、2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする目標を掲げているため、これに「脱原発」が加わると、、、フランスは非常に厳しい状況に追い込まれますね。
まとめると、フランスは、脱原発の圧力はあるものの、「原子力発電+EV化」により「脱炭素」を推進していくようです。
ドイツの脱炭素と発電の状況
次にドイツの脱酸素戦略です。
ドイツは、再生可能エネルギーの先進国といえます。
なんと、ドイツの発電の電源構成比率は、再生可能エネルギーが最も高く、41%にも達していますが、その一方で石炭火力発電も28%とEU主要国の中で最も高い状況です。
この背景には、技術立国であるドイツの産業の効率化を考えると発電効率が高く、低コストで発電できる石炭火力発電が競争力を高めるのに必要な選択だったのでしょう。
それと、、、ドイツ西部のルール地方には豊富な石炭が埋蔵されており、これを用いることで、さらに安価に発電できたことも石炭火力発電に傾倒した一つの要因でもあります。
しかし、、、ドイツは脱炭素化の流れを受けて、「石炭火力発電を2038年までに廃止」する方針(メルケル前政権)を発表しています。
その一方で、脱炭素には直接影響はありませんが、ドイツは「脱原発」も推進しており、「2022年までの脱原発」を目指しています。
となると、、、、ドイツは「脱炭素」「脱原発」の方針を掲げたうえで、自国の経済を成り立たせるだけの発電も必要となり、これを賄うにはさらなる「再生可能エネルギーの推進」を進めつつ、短期的には石炭や石油にくらべて燃焼時のCO2排出量などが少ない「天然ガス発電」へのシフトで対応するしか道はなさそうです。
なお、EUの中でもクルマ産業が盛んなドイツの動きは、、、どうでしょうか。
まず、ドイツ車というと、我らがBMWに始まり、アウディ、メルセデス・ベンツ、フォルクスワーゲン、ポルシェ、などがあり、「高性能で高級なクルマ」が多いこともドイツ車の特徴ですよね。
BMWはすでに「完全電気自動車へのシフト」を発表していますし、ますます厳しくなる燃費規制をクリアしていくには、完全電気自動車へのシフトが欠かせない判断となっていくでしょう。
まとめると、ドイツは「石炭火力発電の天然ガス発電へのシフト+EV化」で「脱炭素」を推進していくようです。
イタリアの脱炭素と発電の状況
あと、もう1か国くらい、お国事情を紹介しておきます。
最後はイタリア。イタリアを選んだ理由はイタリアもクルマ王国だからです。
イタリア車で特に目立つのは、スポーツカーが多いこと。フェラーリ、ランボルギーニ、マセラティ、アルファロメオ、フィアット、ランチアなど名前を聞くだけでもワクワクしますよね。
では、、、イタリアの発電事情です。
イタリアもドイツに並び、再生可能エネルギー比率が高く40%にもなります。そして、それ以上に高いのが、天然ガス発電の48%ですね。
イタリアは、すでに「脱原発」を達成しており、原子炉の廃炉についても、4基の原子炉のうち、3基は廃炉作業中で、残1基も2030年までに廃炉することが決まっています。イタリアは、旧ソ連におけるチェルノブイリ原発事故(1986年)の際に国民投票を行って、脱原発が決定し、1990年には4基あった原発がすべて稼働停止しています。
イタリアは、スポーツカーが多い国です。果たして、、、お国事情として、電動化が進むのでしょうか?
フェラーリは、、、ランボルギーニは、、、果たして電気自動車にシフトするのでしょうか。それともハイブリッド止まりか。
フェラーリのPHEVといえば、「フェラーリ SF90」ですが、、、フェラーリは2025年にフェラーリ初となるフルEVを発売する計画にあるようです。
では、、、ランボルギーニは、、、電気自動車のイメージはないですよね。。。。いえいえ、そんなことはありません。

ランボルギーニも脱炭素の例外ではないのです。ランボルギーニは、2024年末までに全ラインアップを電動化することを柱とした「コル・タウリ(Cor Tauri)」計画を発表しています。
※コル・タウリとは「雄牛の心臓」の意味。
BMWよりも、、、3~5年近く計画が早い。ランボルギーニも凄い。
でも、、、電動化して高性能モーターを搭載したとしても、、、、そこまでパフォーマンスが出せるのか、、、疑問です。。。
と思っていたら、ランボルギーニ曰く「ランボルギーニの伝統である最高のパフォーマンスとドライビングダイナミクスを保証できる技術ソリューションを見極めることに、常に焦点が当てられる」らしく、まずはハイブリッドから導入して、その後にフルEVに移行する計画とのこと。
■コル・タウリ(Cor Tauri)計画
2021~2022年:内燃機関を搭載するモデルの最終。
2024年末:ハイブリッド(CO2排出量を50%削減)
2026~2030年:フル電動ランボルギーニ(パフォーマンスの面で、クラストップに位置づけることが目標)
ここで紹介したように、最高のパフォーマンスが求められるスポーツカーでさえも電動化の波には逆らえません。
いや、むしろランボルギーニは「ブランドのDNAと、課題をチャンスに変えるランボルギーニの企業風土」から自ら電動化の波に飛び込んでいっているようにも見えます。
まとめると、イタリアは、「脱原発を達成済みで、今後は再生可能エネルギー+EV化」により「脱炭素」を推進していくようです。
さてさて、我らがMINIも負けてはいません。
フルEVには、、、様々な課題がありますが、自動車業界全体で乗り越えていって、その先にある「地球環境にやさしいクルマ」に生まれ変わっていってもらいたいですね。
温室効果ガスの種類
地球温暖化対策の推進に関する法律で定められている温室効果ガス。
1.二酸化炭素
2.メタン
3.一酸化二窒素
4.ハイドロフルオロカーボンのうち政令で定めるもの
5.パーフルオロカーボンのうち政令で定めるもの
6.六ふっ化硫黄
7.三ふっ化窒素
完全電気自動車は本当にエコなのか?
完全電気自動車(フルEV)はバッテリーに蓄えた電力でモーターを回して走るため、「走行段階では排気ガス(二酸化炭素)を一切出さない」のです。これが完全電気自動車が「ゼロエミッション・ヴィークル(排出ガスゼロの乗り物)」と呼ばれる所以です。
しかし、、、「走行段階では排気ガス(二酸化炭素)を一切出さない」のうち、「走行段階では」がポイントなのです。
それは、どういうことかと申しますと。。。
実は、、、完全電気自動車(フルEV)であっても、、、「走行時以外」で二酸化炭素(CO2)を間接的に排出しているのです。
・バッテリーに充電する電力の発電時。
・完全電気自動車を生産する工場で利用する電力。
※共に日本の再生可能エネルギーの発電比率が20%にも満たないため。
ちょっと、意地が悪いようにも聞こえますが、実は当たり前な話なのです。もともと「エネルギーを生産(発電)するとき」が問題なのですから。。。
ちなみに日本の再生可能エネルギーの発電比率は18%(2019年度)しかなく、石炭火力発電が31.9%、天然ガス火力発電が37.1%です。

※出典:IEA「Data Services」、各国公表情報より資源エネルギー庁作成
そのため、本当の意味で「ゼロエミッション・ヴィークル(排出ガスゼロの乗り物)」といえる様になるには、、、クルマを生産するときから始まっているのです。そして、クルマに乗る時の充電の仕方も重要なのです。
ようは、、、太陽光や風力といった再生可能エネルギーや原子力だけで発電するのであれば排出ガスは事実上ゼロになりますが、現在日本の発電量の84%は火力発電。これは、排気管からCO2を出さない代わりに発電所で出していることを意味します。
ゼロエミッション(Zero Emission)とは
・ゼロ・エミッション(zero emission)とは、環境を汚染したり、気候を混乱させる廃棄物を排出しないエンジン、モーター、しくみ、または、その他のエネルギー源を指す。「エミッション」とは「排出」の意。国連大学が1994年に提唱した排出ゼロ構想である。ゼロエミッション研究構想(Zero Emissions Research Initiative = ZERI)ともいう。
(Wikipediaより引用)
・ZEV規制(ぜぶきせい)
大気汚染対策として米国カリフォルニア州が導入を始めた規制で、自動車メーカーが州内で自動車を販売する場合、電気自動車(EV)や燃料電池車(FCV)など排出ガスを出さない無公害車(ZEV:Zero Emission Vehicle)を一定比率以上販売することを義務付ける制度。
規制基準を達成できないメーカーは、罰金を支払うか、規制基準を達成した他のメーカーからクレジットと呼ばれる超過分のZEV排出枠を別途購入しなければならない。ニューヨーク州など複数の州にも同様の規制が拡大された。
(野村証券:証券用語解説集より引用)
言葉の意味から、、、そのままで「エミッション(排出)をゼロにすること」なので、、、すべての活動から発生する排出物を限りなくゼロにすることを目指し、最大限の資源活用を図り、持続可能な経済活動や社会生活基盤を構築していくことになりますかね。
そのうえで、、、米国のZEV規制は「ハイブリッド外し」とも「TOYOTA潰し」取れますし、この動きは欧州(EU)にも広がってきています。だって、、、ハイブリッドって「ゼロエミッション」ではないですよね。これから世界各国の自動車メーカーは「ハイブリッドのHEVからバッテリー式のBEV」に大きく舵を切っていき、その先には「FCEV」へ、、、、となる未来(MIRAI)が待っているのかも知れませんね。
電動化の話は「世界全体が取り組むべき事項」なので、、、熱くなりすぎて、、、話も長くなっちゃいましたね。記事が長くなりすぎてしまったので、、、次回に続きます。お楽しみに!
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