電気自動車の分かりにくい分類を図表で整理。EV化に必要な技術とは?

電気自動車の分かりにくい分類を図表で整理。EV化に必要な技術とは?

電気自動車の表記ってわかりにくいですよね。。。
もともとの「EV」から始まり、ハイブリッドの表記だけでも「HV」やら「PHV」、「HEV」「PHEV」があったり、、、最近では「FCV」やら「FCEV」も、、、そして「BEV」なんかも出ましたが、、、「EV」とは何が違うの?といった疑問がありますよね。

そんな電気自動車と一言でいっても、、、「ハイブリッド」から始まり、「バッテリー式電気自動車」や水素を使った「燃料電池車」などなど、、、まずはどんな種類があるのか図表をつかって分かりやすく整理してみます。

そして、そのあとに「電気自動車が動くための仕組み」についてもわかりやすく掘り下げていきたいと思います。

電気自動車の英語略称の分類は、図表で整理したらわかりやすい。(HV/PHEV/PHV/FCV/FCEV/EV/BEV/HEV)



電気自動車の商用化モデルの始まりは、1997年12月に世界初の量産型ハイブリッド車として、TOYOTAのプリウスが世に出たのが始まりでした。それまでなかった新たな概念のクルマで、、、しかも「ハイブリッド」という響きも良かったですよね。。。

そんな、こんなで、いまや電気自動車といってもいろいろなタイプがあり、そして「HV・PHEV・PHV・FCV・FCEV・EV・BEV・HEV」などの英語表記で省略されていることも多く混乱しちゃいますよね。

それにクルマメーカーの表示も統一された使い方ではないので、、、よけいに混乱です。

そうそう、そういえば、こういった混乱をさけるために、昨年(2021年)のTOYOTAの決算発表会で、この略称の使い方を変えていましたね。HV→HEVに、PHV→PHEVに、FCV→FCEVに、「すべてにEVが付く」ように変化しています。

なので、いま一度、電気自動車について整理しつつ、英語表記をまとめておかないと、余計に混乱すると思いまとめることにしました。

電気を動力としてモーターの力を使って走行するクルマの種類



項目 電気自動車の英語略称の分類(HV/PHEV/PHV/FCV/FCEV/EV/BEV/HEV)
大分類 HV EV
Hybrid Vehicle Electric Vehicle
ハイブリッドカーのこと。
内燃機関とモーターを切り替えながら動く(ハイブリッドで動く)電動車両の全般を指す
電気自動車のこと。
電気を動力(エネルギー)にして、モーターの力だけで動く電動車両の全般を指す
方式 ハイブリッド式 バッテリー式 燃料電池式
中分類 HEV PHEV(PHV) BEV FCEV(FCV)
Hybrid Electric Vehicle Plug-in Hybrid Electric Vehicle(Plug-in Hybrid Vehicle) Battery Electric Vehicle Fuel Cell Electric Vehicle
(Fuel Cell Vehicl)
ハイブリッド式電動自動車 プラグインハイブリッド式電動自動車 バッテリー式電動自動車 燃料電池電動自動車
(燃料電池車)
販売開始 1997年12月
メーカー:TOYOTA
車種:PRIUS
2009年12月
メーカー:TOYOTA
車種:PRIUS PHV
2009年7月
メーカー:MITSUBISHI
車種:i-MiEV
2014年12月
メーカー:TOYOTA
車種:MIRAI
エネルギー供給 ガソリン供給 ガソリン供給
+電力充電
電力充電 水素充填
ガソリンスタンド ガソリンスタンド
+充電スポット
充電スポット 水素ステーション
動力源 内燃機関+モーター 内燃機関+モーター モーター モーター
説明 内燃機関とモーターを切り替えながら動く電動車両のこと。
モーターの電力は、内燃機関を動かす際の損失を回収して電力として充電する。
内燃機関とモーターを切り替えながら動く電動車両のこと。
モーターの電力は、家庭用動力電源をプラグインして充電する。
電気をバッテリーに蓄電して、モーターの力で動く電動車両のこと。本来的な意味での電気自動車のこと。 水素と酸素の化学反応から電気を作り、モーターの力で動く電動車両のこと。
メリット ・EV走行とガソリン走行の併用により航続距離が長くなる。
・EV走行時はガソリン車より燃費が良い。
・エコカー減税とグリーン税制(車種により減税率は異なる)を受けられる。
・充電により、電費効率が良く低コスト。
・充電+発電により、航続距離が長くなる。
・エコカー減税の減税率100%・グリーン税制の減税率75%が適用。
・CEV補助金が適用。
・充電のみ(ガソリン不要)なので低コスト。
・エコカー減税の減税率100%・グリーン税制の減税率75%適用。
・CEV補助金が適用。
・二酸化炭素(CO2)の排出量がゼロ。
・FCEVだけでゼロエミッションを達成。
デメリット ・充電できるPHEVやBEVに比べるとコスト高。
・CEV補助金が適用されない。
・エンジンとモーターの両方を搭載するので、車両価格が高額。
・エンジンとモーターの両方を搭載するので、車両価格が高額。 ・航続距離が短い。
・充電に時間がかかる。
・蓄電池が経年に伴い徐々に劣化する。
・水素ステーションの普及率が低い。
・車両本体価格が最も高い。
・選べる車両タイプが少ない。
・普及段階までの課題が多い。
代表的な車種
PRIUS
【引用】https://global.toyota

CROSSOVER PHEV
【引用】https://www.mini.jp

i-MiEV
【引用】https://www.mitsubishi-motors.co.jp

MIRAI
【引用】https://toyota.jp/
・TOYOTA PRIUS
・HONDA INSIGHT
・MINI CROSSOVER PHEV
・BMW 330e M Sport
・TOYOTA PRIUS PHV
・MITSUBISHI i-MiEV
・BMW iX iDrive50
・Mercedes-EQ EQA 250
・BMW i Hydrogen NEXT(Concept car)
・TOYOTA MIRAI


皆さん、、、如何でしょうか。
「電気自動車の英語略称の分類(HV/PHEV/PHV/FCV/FCEV/EV/BEV/HEV)は、図表で整理したらわかりやすい。」として上記に表で分類しましたが、整理できたでしょうか?

私も仕事柄、多くの関係者に説明する機会が多くあり、「パッ」と映像で視覚的に見せた方が理解が早いし、意見も出やすいんですよね。

まー、そんなこんなで、皆さんの理解の助けになったらうれしいです。

最後に、上記の表を整理していく過程で感じたことは、、、本当の意味で「電気自動車(EV)」と呼べるのは、、、現在の技術ですと「FCV(燃料電池車)とBEV(バッテリー式電動自動車)」になり、ハイブリッドは「内燃機関の自動車から電気自動車へ移行するために非常に重要な役割を担ったクルマ」であったといえるのかもしれませんね。

そもそもハイブリッドがなければ、米国や欧州などのクルマ産業が国の主幹産業となっている国々では「ゼロエミッションビークルでないと販売してはいけない」といった方針は出せなかっただろうと思います。

EVに必要な技術



では、、、ここからは技術的なお話です。 実際に電気自動車って、、、どうやって動いているのでしょうか? 「電気を動力」にして「モーターの力」で走行することは知っています。
でも、、、それだけですとミニ四駆やラジコンカーと変わらないですよね。

ということで、電気自動車ってどういう仕組みで動くのか。
必要となる技術って何があるのか、これからますます普及していく電気自動車の動く仕組みを掘り下げていきます。

まずは、電気自動車で必要となる技術ですが、主なものとしては以下に挙げる4点で、順番に説明していきます。

1)インバーター回路
2)オンボードチャージャー
3)DC-DCコンバータ
4)バッテリー管理システム(BMS)

1)インバーター回路



 パワートランジスタを用い、モーターのコイルに電流を供給してモーターを回転させるという役割があります。

いきなり、「パワートランジスタ」とか聞きなれない言葉がでてきましたが、このパワートランジスタとは、電気自動車のほかにも身近な家電製品(エアコンや冷蔵庫、洗濯機など)や太陽光発電にも使われている部品です。

では、パワートランジスタとは何をする部品か、その特徴をあげると以下になります。

・大きな電力を用いて駆動する電気機器に使用する。
 ※大きな電力=動作時の許容電力が1W以上
・主な役割は「電流の増幅」「スイッチング」「整流」すること。

「電流の増幅」「スイッチング」「整流」とか言われてもイメージがわかないですよね。この役割をもう少し嚙み砕くと以下になります。

■パワートランジスタの主な役割の説明
電流の増幅:電気の流れを大きくしたり、小さくすること。
スイッチング:電気をオンやオフすること。
整流:交流電力(AC)を直流電力(DC)に変換すること。

パワートランジスタの主な機能について、簡単に説明しましたが、そのうち、、、「整流」って何でしょうかね。
整流ですが、、、文字からすると「(電流の)流れを整える」となりますよね。この流れとは説明にある「交流」とか「直流」になります。クルマのシガーライターソケットにプラグを差し込みすると充電できたりしますが、ここに記載されている「AC」とか「DC」といったものが、直流と交流になります。

この交流(AC)と直流(DC)についても、、、これまで「何となく」くらいの理解で、よくは分からない人もいらっしゃると思いますので、、、これも少し説明を付加して、利用例も合わせて示すと以下になります。

■交流(AC)と直流(DC)とは
1)交流(AC)とは
 交流は「Direct Current」の略で、コンセントの電気のことです。
 電気の流れる方向、電流(A)、電圧(V)が周期的に変化する流れ方をします。
 コンセントの電気で交流(AC)を用いる理由は、電気を無駄なく長距離へ送電することができるからです。電気の特性として高圧で送電する方がロスが少ないため、発電所から変電所を経て各家庭へ電気を送る際には高圧(6600V)で送電します。これを各家庭に分配する際に100Vや200V といった小さな電圧に変圧して供給します。交流(AC)であれば、この電圧の大きさを容易に変えることができるためコンセントの電気に使われます。

2)直流(DC)とは
 直流は「Alternate Current」の略で、電池の電気のことです。
 電気が導線の中を流れるとき、その電気の流れる方向、電流(A)、電圧(V)が変化しない電気の流れ方。
 直流(DC)は、長距離を送電するには電圧降下してしまい、この降下した電圧を簡単に上げることができないので向いていないのです。そのため、そのままの電圧で使い、送電もしないのであれば仕組みも単純で小型化できて、持ち運びも容易な電池としての用途が向いています。

なお、電流(A)を簡単に悦明すると「電気の大きさ」で、電圧(V)は「電気の勢い」と表現できます。

■電気自動車での利用例
電気自動車に搭載するバッテリーで電力を使うのは、直流電力(AC)ですが、充電する際には、普通充電ならエネルギー効率を考慮して交流(DC)を使い、急速充電ならスピード重視で直流(DC)となります。

また、モーターは直流でも交流でも回せますが、緻密な制御をするために交流(DC)を使います。

これで、電気自動車に使われるインバーター回路の「パワートランジスタ」がどのような部品なのか、少しはイメージが沸いたと思います。

それでは、、、なぜ、電気自動車にインバーター回路が必要なのかをまとめると以下になります。

インバーター回路に使われるパワートランジスタにてバッテリーからモーターに流れる電流を緻密に制御することで以下の操作ができるようになるだけでなく、電気の無駄を省くこともできます。これによりエネルギー効率を高めることができるため「省エネ」になるからです。

・モーターの回転速度を徐々に下げたり上げたり調整する。
・回転方向を切り替えることで前進したり、後進できる。
・スイッチングでオンやオフすることで発進したり、停止する。

なお、前述した電気自動車の急速充電(直流)と普通充電(交流)ですが、電気自動車側に2つの充電口(急速充電の直流用と普通充電用の交流用)があり、接続するプラグの形状が異なるため間違えることはないです。

それと交流電力の場合は東日本と西日本とで周波数が異なりますが、これも電気自動車側で違いを判断するので「誰でも安心して使える設計」ですね。

こういったヒューマンエラーをなくすためのモノづくりを「信頼性設計」といい、利用者が知らないで操作をしても安全を保ってくれます。

2)オンボードチャージャー



内燃機関で走行する際に使う「エンジンブレーキ」を電気自動車で実現するためにモーターの性質(発電機としての性質)を利用して実現したものがオンボードチャージャーです。

それでは、もともとのモーターの仕組みをご存じでしょうか。

モーターが回転するのは電流と磁界の関係から回転しますが、これでは余計分かりにくくなるので、ここでは簡単にモーター(≒発電機)の仕組みに触れておくと以下になります。

■モーターの仕組み
・電気を流すとモーターが回転する。(フレミング左手の法則)
・モーターを(別の動力で)回転させると電気が発生する。(フレミング右手の法則)

では、このモーターの仕組みを踏まえておき、実際の電気自動車ではどうなるか考えてみましょう。

まず、電気自動車はモーターの回転する力で走行しています。

アクセルを踏むと前進して、、、停止をするために電気自動車のアクセルを離すことで、モーターが回転しなくなり、ブレーキをかけることで、タイヤに摩擦抵抗を与えて減速します。しかし、それでもクルマは進行方向に対する「(物理学でいう)慣性の法則」により走行し続けます。

そこで、ブレーキに加えて、モーターの性質のうち、発電機としての性質を利用して「慣性の法則による進む力をモーターで受けることで、モーターを逆回転させる=抵抗を与えて減速させつつ、これにより発電した電気をバッテリーにチャージ(充電)する。」というものです。

ようは、電気自動車は「オンボードチャージャーの仕組みにより、ブレーキをかけながら、バッテリーに充電する」のです。そのため「チャージャー(充電する)」との名前がついているのです。

3)DC-DCコンバータ



DC-DCコンバータは直流(DC)から直流(DC)へコンバート(変換)することになりますが、具体的には「直流(DC)のDC24Vから直流(DC)のDC1.8VとかDC3.3Vに電圧を変換する」ための装置です。

では、なぜ直流(DC)の電圧を変換したいのでしょうか。 これは、、、「半導体基板のほとんどが直流(DC)で動作」し、しかもそれぞれ「動作する電圧範囲が異なる」ためです。

しかも、、、先ほども記載した通り、直流(DC)は電圧を変換するのには向かないので、これを変換するためには、それぞれの電圧に合わせた「DC-DCコンバータ」が必要になります。

ようは、電気自動車のバッテリーは「セルと呼ばれる数100個の電池(大きさは単三電池より少し長い程度)を直列と並列を組み合わせて接続することで300~400Vの高電圧を生み出すことで、モーターを駆動させています。そして駆動用モーターとは別にIC(Integrated Circuit)や制御回路を駆動するための電圧も必要で、それぞれの電圧範囲に合わせて電圧を変換するのが「DC-DCコンバータ」です。

4)バッテリー管理システム(BMS)



バッテリー管理システム(Battery Management System/BMS)とは、電気自動車に搭載されているバッテリーが過充電にならないように制御するための仕組みです。

先ほども記載したように電気自動車には「数100個のセルと呼ばれる電池」が直列や並列に接続することで、以下のことを実現しています。

・高電圧(セルを直列で配置することで実現)
・長持ち=省エネ(セルを並列で配置することで実現)

その際にこれらのセルが過充電を起こさないように「1個1個のセルの状態を管理する」ための仕組みが「バッテリー管理システム(Battery Management System/BMS)」です。

今回の記事はいかがでしたでしょうか。
はじめは電気自動車の種類について整理させていただきました。
いまや電気自動車といってもいろいろなタイプがあり、そして「HV・PHEV・PHV・FCV・FCEV・EV・BEV・HEV」などの英語表記で省略されていることも多く混乱しちゃいますよね。

なので、、、特に分かりにくい英語の略称については、図表にて整理していますので、、皆さんの参考になればいいなと思います。

では、次回の記事は完全電気自動車が普及するための課題について掘り下げていきたいと思います。