電気自動車の普及率の低さと普及するための課題(インフラ整備)

電気自動車の普及率の低さと普及するための課題(インフラ整備)

これまでの電気自動車に関する記事(以下に記載)で、電気自動車について少し理解が進んだことで、、、、これからの時代は「完全電気自動車」の時代に突入していくのだということが改めて理解できたのではないかと思います。

■これまでの電気自動車に関する記事リンク
これからのMINIの電動化について考えてみる
電気自動車の分かりにくい分類を図表で整理。EV化に必要な技術とは?
電気自動車の普及率の低さと普及するための課題(インフラ整備)
電気自動車の普及率の低さと普及するための課題(技術的な革新)
電気自動車の普及率の低さと普及するための課題(法的整備)

これまでの記事を踏まえると、、、完全電気自動車や燃料電池車とは、、、これまでの「クルマはエンジンで動く(ハイブリッドでもエンジンを使っている)モノ」という概念に対するパラダイムシフトであり、これまでの「自動車はエンジンで駆動する」ものから、ハイブリッドの登場で「モーターが支援しつつ、主にエンジンで駆動する」ようになり、これからは「モーターのみで駆動する」こととなり、徐々にモーターが占める割合が大きくなり、エンジンからモーターに置き換わっていくことが分かります。

これからの完全電気自動車の普及によって、電気自動車への進化が最終段階に入ったように感じます。
しかし、、、身近にまだまだ完全電気自動車を見かける機会は少ないです。
それは、、、何故でしょうか?
それは電気自動車が普及段階に入るまでにクリアしていかなければならない課題があるからです。

今回は、、、そんな電気自動車が普及するためにクリアしていくべき課題について掘り下げていきたいと思います。

完全電気自動車の普及率

まずは、、、電気自動車って、、、世の中にどのくらい広まっているのか?

これを考える前に・・・そもそも自動車って売れているのでしょうか。

昭和の高度経済成長から「平成大不況」に落ち込み、、、リーマンショックやら震災などの影響もあり、日本経済は長い年月を経て疲弊しきっている状況です。当然、、、日本で働く人の給料も抑制されている状況が続いています。

そのような状況下だと、、、クルマを買うどころではなく、生活するだけで大変。
そのような背景もあり、、、「若者の自動車離れ」が叫ばれつつ、「クルマを購入する動機」が失われている現代。

一昔前の「自動車を所有するのがステータス」であった時代は・・・・もう来ないのでしょうか。

ではでは、、、自動車の売れ行きってどのような状況なのか見てみましょう。
まずは自動車の新車における「年別燃料別販売台数」を見てみましょう。

年別燃料別販売台数

この情報は「一般社団法人 日本自動車販売協会連合会」が公表している「燃料別販売台数(乗用車)」をもとに「内燃機関」「ハイブリッド」「電気自動車」「燃料電池車」に情報を整理しなおしてグラフ化してみました。

情報元:一般社団法人 日本自動車販売協会連合会
http://www.jada.or.jp/data/month/m-fuel-hanbai/

うー-ん、グラフ化してみると良く分かりますが、、、確かに全体的に販売台数が右肩下がりの傾向ですよね。
寂しい限りですが、、、クルマが売れない時代にあるのは間違いなさそうですね。

新車の販売トレンド

ここ数年の年別燃料別販売台数の傾向でいえることは、、、以下になります。

・全体の販売台数は下降傾向にある。
・ハイブリッドや内燃機関(ガソリン・ディーゼル)の販売台数は下降傾向にある。
・電気自動車は2020年に落ち込みして、2021年は回復傾向にある。
・燃料電池車は販売台数は少ないものの、右肩上がりの傾向にある。

ようは、、、内燃機関やハイブリッドの自動車は売れなくなっていて、電気自動車(フルEV)と燃料電池車が売れ始めている状況にあるが、、、全体の構成比率でみるとまだまだ誤差の範囲でしかない。

そこでいえることは、「電気自動車がクリアしなければならない課題」があるということです。 では、次の項目ではその「課題」について掘り下げていきます。

完全電気自動車が普及するための課題

ここでは、ガソリンを使わない電気自動車が普及するために解決していく課題を「インフラ整備」と「技術的な革新」と「法的整備」いった観点で整理しています。

《インフラ整備》
・充電ステーションの普及
・充電時間の短縮(急速充電器の高性能化と電力契約)
・電力不足の懸念

《技術的な革新》
・電気自動車の軽量化
・航続距離をガソリン並みに
・車両価格の低価格化

《法的整備》
・電気自動車を買い替えやすくするためにより一層の減税や補助。
・ゼロエミッション
・販売規制

それでは、、、順番にそれぞれの課題を掘り下げていきましょう。

インフラ整備に関する課題

まずは、、、インフラ整備に関する課題を挙げると、、、、主なものは以下になるでしょうか。

《インフラ整備》
・充電ステーションの普及
・充電するのに長時間かかる(急速充電器の高性能化と電力契約)
・電力不足の懸念

《充電ステーションの普及》
まず、完全電気自動車ですから、充電しないと走りません。
戸建てにお住いの方で、家に充電する設備をつけられたら良いですよね。
また、マンションにお住まいでも、駐車場とかに充電設備があればいいですよね。

それと、、、ディーラーには、充電設備がついていることが多いです。
また、、、最近では、環状道路沿いとかでも、充電設備を見かけたりします。

では、、、充電設備(充電スポットとか電気ステーションとか)はどのくらい広まってきているのでしょうか?
現在の「ガソリンスタンド」と比較してどのくらいあるのかを考えてみましょう。

燃料(給油・充電・充填)ステーションの比較

燃料ステーション事業所数集計時期情報源
ガソリンスタンド29,005カ所2020年12月末資源エネルギー庁
充電スタンド29,233カ所2021年3月末ゼンリン
水素ステーション165カ所2022年1月末燃料電池実用化推進協議会
燃料(給油・充電・充填)ステーション数

充電スタンドって、、、思ったより普及しているんですね。
ガソリンスタンドのほうが、まだまだ多いですが、それでもガソリンスタンドと比較しても63%まで普及しているんですね。
ただ、、、このなかにはディーラーに設置されているものも含まれています。

ディーラーに設置されている電気スタンドって使う気になりますか?
夜や夜中は使えるんでしょうか?
近くにあるディーラーの電気スタンドは、別のメーカーしかなかったら、、、

などなど、、、63%という数値ほど普及にはまだまだ行き届いていない感じを受けます。

今後は、、、マンション駐車場とかに普及していったり、太陽光発電+蓄電池と組み合わせなんかもあり得ますね。

参考までに便利なツールを紹介しておきます。

Googleで「充電スポット」で検索すれば近隣の充電スポットをマップ表示してくれますが、詳細に調べたいときには、EV充電マップが便利です。

《EV充電マップ/GoGoEV》
普通充電や急速充電などの充電タイプや無料充電や駐車無料などの絞り込み検索も可能なEV充電専用の検索サイトです。

https://ev.gogo.gs/map/
EV充電マップ/GoGoEV (2022年2月時点の画面イメージ)

電気自動車を急いで充電するには急速充電。充電の種類

次のインフラ整備としての課題は、「充電時間がかかる」問題です。
ガソリンであれば、満タンまで給油するのにかかる時間は数分程度ですよね。

それでは、、、電気の充電ではどうでしょうか?
身近なところで考えると、、、皆さんが日常で利用されている「スマホ」を満充電するときにも「普通充電」と「急速充電」というのがあります。
機種にもよりますが、、、普通充電では3-4時間で満充電できるのに対して、急速充電では2-3時間くらいでしょうか。

電気自動車も充電する仕組みは同じで、充電するには「普通充電」と「急速充電」というのがあります。

この充電の種類の違いについて簡単にまとめてみます。

まず初めに充電全般に関することに触れておきます。
電気自動車に使われる充電池は「リチウムイオン電池」と呼ばれるものです。
このリチウムイオン電池は、身近なものではスマホやノートパソコンにも使われており、充電に関する特徴というか、注意点をあげると以下になります。

・リチウムイオン電池(種類による)は、満充電のまま長時間放置すると電池劣化の原因になる。
・日常的な充電は、80~90%くらいの充電量で使いこなすとバッテリーが長持ちする。
・充電時間は、満充電に近くなると出力が制御されるので、同じペースでは充電されていかない。
・急速充電を繰り返すと電池劣化の原因になる。

それでは、、、リチウムイオン電池の全般的な特徴を踏まえて、、、次に普通充電と急速充電の特徴をあげると以下になります。

《普通充電の特徴》
・電源は、単相交流100Vコンセントもしくは200Vコンセントを使用。
・充電設備は「コンセントタイプ」と「充電ケーブル付き」の2種類から選択可能。
・導入コストが比較的少なく、自宅やマンション、会社、宿泊施設などに設置されることが多い。

《急速充電の特徴》
・電源は、3相200Vを使用。
・充電時間は、普通充電よりも強い電流と電圧を流すことで、短時間での充電可能。
・用途としては、外出時の継ぎ足し充電や、緊急時の充電向き。
・設置場所としては、SAやPA、道の駅、ガソリンスタンドなどが多い。

お待たせしました、、、気になる充電にかかる時間ですが、次の項目で計算してみましょう。

日産リーフe+を80%充電するのにかかる時間を計算

それでは、、、実際の車種「日産リーフe+(64kWh)」を80%充電するのにかかる時間を計算してみましょう。
(本当はMINIで計算したいところですが、、、完全電気自動車はまだ先なので。。。)

ちなみに満充電ではなく80%充電としているのは、先に述べた「満充電に近くなると出力が制御されるので、同じペースでは充電されていかない。」という特徴があるためです。

まず、、、「日産リーフe+」などの電気自動車(EV)が搭載するバッテリーの容量(電力量)は、一般的に「kWh」という単位で示されており、「日産リーフe+」では、「64kWh」「40kWh」の2種類があります。(2022年2月時点)

そこで、、、今回は、大容量の「64kWh」バージョンを80%充電するのにかかる時間を求めていきます。

《日産リーフe+を80%充電にかかる時間の計算式》
では、、、まず初めに「普通充電」で充電した場合にかかる時間です。

「充電量(kWh)」を求める計算式は、、、どうすればよいでしょうか。
「充電量(kWh)」とは、、、どのくらいの電力で、、、どのくらいの時間をかけて充電したのかとなり、これを式で表すと、、、、以下の式となります。

充電量(kWh)=電力(kW)×時間(h)・・・・(1)

ここで単位「k(キロ)」は1000の意味なので、両方の辺を「k」(1000)で割って「k」を外します。

充電量(Wh)=電力(W)×時間(h)・・・・(1)’

では、、、この 電力(W) はどのように求めるのでしょうか。家庭用コンセントの「100V」とか、スマホの充電器に書いてある「2A」とかに変換しないと計算できませんね。。。そのため上記(1)’式の電力(W)をさらに分解します。
これは、、、中学生で習ったジュールの法則(覚えていますか?)というので、表すことができます。

ジュールの法則により、「電力(W)は、電圧(V)と電流(A)をかけたもの」として表せるので、、、以下の式で表すことができます。

《ジュールの法則》
電力(W)=電圧(V)×電流(A)・・・・(2)

次に、、、(1)’の式の電力(W)に(2)の式を当てはめると、、、以下の式になります。

充電量(Wh)=電圧(V)×電流(A)×時間(h)・・・(3)
※V×Aは、「電力(W)=電圧(V)×電流(A)」からV×A=Wとなります。

そして、、、「k」を両辺にかけて、最初の充電量(kWh)が以下の式に置き換えることができました。

充電量(kWh)=電圧(V)×電流(A)×(k)×時間(h)・・・(1)”

では、、、、ここから式を変換して充電にかかる「時間(h)」を求める式にします。

上記(1)”より、、、時間(h)を求めるには、、、時間(h)を左辺に持ってきます。

∴時間(h)=充電量(kWh)÷(電圧(V)×電流(A)×(k))

と表すことができました。

この式のうち、、、充電量(kWh)はクルマのカタログなどの諸元(スペック)に出ていて、今回は「日産リーフe+の64kWh」で計算するので、「64kWh」です。

次に、、、電圧(V)とか電流(A)は「充電ステーション」とか「家庭用の充電」の設備の性能になりますが、、、実は、、、家庭用の電源の電圧には2種類あることをご存じでしょうか。

家庭内のコンセントに使われる電灯などの通常の家電は100Vです。そして、大型のエアコンやエレベーターに使われるものは、動力用電源で200Vになります。

そして、、、電気自動車に使われる電源は動力用の200Vになるので、「電圧=200V」で計算します。

電灯:100V
動力:200V・・・・電気自動車の充電用の電圧

では、、、次は電流(A)を求めます。
この電流(A)ですが、、、家庭用の充電設備では「15A」と「30A」が選択できます。
そのため、、、それぞれで計算してみましょう。

1)電流が15Aの場合

まず、計算する式は以下の式となります。

時間(h)=充電量(kWh)÷(電圧(V)×電流(A)×(k))

そして、、これまでに分かっている数字(条件)をあてはめます。

《わかっている数字(条件)》
充電量(kWh):64kWh
電圧(V):200V
電流(A):15A

充電時間(h)=64kWh÷(200V×15A×k×1h)
=64kWh÷(3000VAh)

ここで、3000VAhを分かりやすく変換します。

まず「3000」は「3k(3×k)」と表せます。
次に「VA」は、ジュールの法則「電力(W)=電圧(V)×電流(A)」から「VA」は、「W」になります。

以上より、、、「3000VAh=3kWh」となり、1時間辺り3kWh充電できることになります。

※ジュールの法則よりVA=Wとなるため。
※k=1000のため。

この「3000VAh=3kWh」をもとの式に戻すと単位が揃います。

充電時間(h)=64kWh÷3kWh
=64÷3・・・・同じ単位なので消せる。
=21.3(h)

ここで求めたいのは、「日産リーフe+(64kWh)を80%充電するのにかかる時間」です。

充電時間(h)=21.3(h)×80%=17.06(h)

∴日産リーフe+(64kWh)で80%充電に必要な充電時間は約17時間となる。

2)電流が30Aの場合

では、、、30Aで充電すると、、、先ほどの計算より2倍早く充電できることが分かります。

電流15Aで1時間辺り3kWh充電できる。
電流30Aでは、、、200V×30A×1時間=6000VAh=6kWhとなり、1時間辺り6kWh充電できる。

となると、、、電流15Aの半分の時間で充電できることになるため、

充電時間(h)=17.06(h)÷2=8.5(h)

∴日産リーフe+(64kWh)で80%充電に必要な充電時間は約8.5時間となる。

これ家庭用に使われている普通充電での日産リーフe+の充電時間が分かりました。

普通充電で日産リーフe+(64kWh)を80%充電した場合
3kWh(15A*200V):約17時間
6kWh(30A*200V):約8.5時間

では、、、次に街中にある「急速充電」では、、、どのくらい時間がかかるのでしょうか。
これまでの説明から「電圧(V)」や「電流(A)」を大きくすると「充電量(kWh)」が大きくなり、充電時間を短くできることが分かっています。

急速充電を簡単に説明すると、、、この「電圧(V)」や「電流(A)」を大きくして充電時間を短くしていて、設置していっる設備によって、、、この数値は異なります。

《急速充電の種類》
地域や設置場所により、充電量は異なりますが、、、、参考までに近隣の設置場所で調べた急速充電の充電量を下記に示します。

ファミリーマート、イオン:20kWh
ローソン、高速道路のサービスエリア:30kWh
ディーラー:45kWh
セブン・イレブン、電力会社の補助で設置してある物:50kWh

家庭用の設備(普通充電)が「3kWh~6kWh」であるのに対して、これらの急速充電は「20kWh~50kWh」にもなり、「7~8倍」になっていることが分かります。

普通充電と急速充電の比較(日産リーフe+(64kWh)を80%充電の場合)
普通充電(家庭用):3kWh~6kWh(8.5h~17h)
急速充電(各施設):20kWh~50kWh(1.0h~2.6h)

家庭用の設備(普通充電)で80%充電すると17時間もかかりますが、、、
これが、各施設(コンビニやサービスエリア、ディーラーなど)に設置している急速充電では最短1時間程度で80%充電できることが分かりました。

それでも、、、ガソリンの給油にかかる数分と比較すると急速充電でも1時間かかるのをどれだけ短縮することができるのか。これが更なる普及のポイントとなるのは間違いなさそうです。

例えば、ガソリン給油並みの時間として5分で急速充電できるようにするには、どうすればよいでしょうか?

それには、、、先ほどの計算式から電圧をあげればよいことが分かります。

ここでは、計算を省きますが、、、1台あたり少なくとも350kW以上の容量の充電器が必要となります。

そして、、、ガソリンスタンドの規模にもよりますが、6台を一緒に急速充電するのに必要となる容量を算出すると2000kWを超えることになります。

この規模の電力は大規模工場や大型オフィスビルなどと同等となります。そのため、電力契約も受電契約区分である「特別高圧」という種類になり、この「特別高圧」での契約数は1万件ほどなので、、、すべてのガソリンスタンドに普及すると倍増することになります。

なお、、、「特別高圧の導入」には、大規模な特高受電設備電気主任技術者の配置などが必要になるため、維持管理にかかるコスト増や安全管理についての規制も厳しくなるため、これまでとは違う運用が求められるため、、、「特別高圧」未満の規模に抑えて導入する動きも増えるでしょう。

このような背景(充電時間を短縮することの課題や制約事項)から、、、私的にはこれを解決するためには「ガソリンスタンドの進化」が必要になると思っています。

そこで、、、次の項目では、、、このガソリンスタンドの進化について記載していきます。

ガソリンスタンドに充電設備が普及しない理由と進化がカギ

これまでに記載したインフラ設備に説明で、、、「充電ステーションの増加」と「充電にかかる時間の短縮化」が課題であることが分かりました。

そこで、この2つを同時に解決することができるのが、、、ガソリンスタンドの活用です。
いま既に普及している「ガソリンスタンドの場所」を活用して、、、「ガソリンスタンドで急速充電ができる」ようになればいいことです。

しかし、、、、なぜにガソリンスタンドに充電設備が普及していないのでしょうか。

これには「パッと見た」感じでは相性がいいように見える「ガソリンスタンドと充電ステーション」ですが、、、実は「非常に相性が悪い」のです。

ガソリンスタンドに充電ステーションが普及しない理由をあげると以下があります。

ガソリンスタンドに充電ステーションが普及しない理由
・給油時間(5分程度)と充電時間(急速充電で30分~1時間程度)の所要時間差(時間短縮には特別高圧が必要)
・ガソリンと電気代の価格差
・ガソリンが電気設備に引火するリスクがあり、危険度が高い

まず、1点目の充電にかかる所要時間の差については、前項にてお伝えしている内容となります。

では、、、次に「ガソリンと電気代の価格差」とはどのくらいなのでしょうか。
ガソリンと電気の単価は以下になります。

《電気とガソリンの単価》
電気代:1kWhあたり30円前後
ガソリン代:1Lあたり167.8円(2022/2/20現在の全国平均)

(参考)都道府県平均 ガソリン価格ランキング [ レギュラー ]
https://gogo.gs/ranking/average/


ガソリンと電気で同じ距離を走るのに必要なエネルギーでの価格差



ガソリンの単価と電気の単価はわかりましたが、、、実際に「どれだけ走れるのか?」が重要ですよね。。。そこで、、、「ガソリンと電気で同じ距離を走るのに必要なエネルギーでの価格差」を算出します。
(意外と、、、燃費と電費を比較するのに同じ航続距離を条件にしているサイトってないですね)

この算出は、、、電気自動車を「日産リーフe+」で、対するガソリン車をMINI Clubman(Cooper)で比較します。
なお、電費/燃費の算出するモードは「WLTCモードで500km走行するのに必要なエネルギー」とします。

■条件
WLTCモード(平均)
走行距離:500km

《電気を充電》
車種:日産リーフe+
充電容量:64kWh
交流電力量消費率:161 Wh/km
走行可能距離:458km

500km走るために必要な充電量:69.86kWh
∴電費は1kWhあたり30円で計算すると約2,095円となる。

《ガソリンを給油》
車種:MINI Clubman(Cooper)
燃料消費率:14.7km/L
タンク容量:48L
走行可能距離:705.6km

500km走るために必要な燃料:34.01L
∴燃費は1Lあたり167.8円で計算すると約5,707円となる。

上記の計算より、ガソリンと電気で同じ走行距離500kmを確保するのに必要とするエネルギーにかかる費用は、わかりましたで、、、これを比較します。

2,095円(電費)÷5,707円(燃費)=0.367

電気を充電するほうが、ガソリン給油に比べると「36.7%」となり、約「1/3」のコストで足りることとなるため、顧客単価(お客様1人の売上)が下がることになります。

ようは、、、、「ガソリンスタンドにとって電気の充電はガソリンの給油に比べて儲けにくい」ことになります。
※儲けにくいとは、価格差により売上が下がるため利益を確保しにくいため。

では、、、ガソリンスタンドにとって、所要時間もかかり、顧客単価も下がることが分かりましたが、、、、それでもガソリンが売れなくなる時代が来ることを予想すると、、、それでも背に腹は代えられないはずです。。。しかし、次の問題は、、、かなりリスクが高いです。

それは、、、「ガソリンが電気設備に引火するリスクがあり、危険度が高い」ことです。

ガソリンは揮発性(液体が気化して気体になりやすい)という特性があります。
電気設備は、ショートすれば火花が出ます。

これが、、、同じ場所に設置していたら、、、、ガソリンに引火して火災になりやすいです。

そのため、総務省消防庁では、「電気自動車用急速充電設備の安全対策」について検討していて、ガソリンスタンドに電気設備を設置するための技術基準などの見直し、消防法の改正を含めて検討しているようです。

「給油取扱所では、給油時等にガソリン等の可燃性蒸気が滞留するおそれがあるた め、電気設備に関する技術基準に定める省令に基づき、ガソリン等の可燃性蒸気が 滞留するおそれのある範囲に電気設備を設置する場合は、当該可燃性蒸気が流入 しない構造(防爆構造)とする必要がある。」
※電気自動車用急速充電設備の安全対策に係る調査検討会資料より抜粋

どうやら、いくつかの基準を満たせばガソリンスタンドに安全に充電設備を設置できるようです。
とはいっても、、、設備は故障するモノなので、、、油断は禁物。安全対策は充分に!です。

それでは、、、ここでおさらいです。
ガソリンスタンドに充電設備が普及しない理由とは、、、、

ガソリンスタンドに充電設備が普及しない理由
・給油と充電時間(急速充電)には、7~8倍程度(30分から1時間程度)の所要時間差があること。
・電気代はガソリン代の1/3のコストのため、儲かりにくいこと。
・ガソリンが電気設備に引火するリスクはあるが、設置基準に沿って対応(ようはコスト高)する必要があること。

しかし、、、急速充電をガソリンスタンドの経営で成り立たたせることはできるのでしょうか。
所要時間はかかるし、1/3のコストでは儲かりにくい。
充電時間を短縮して回転率を上げるにもより一層の急速充電は設備コストも高い。
火災等のリスク回避のため設置基準に沿った設備や安全対策が必要。

いろいろと、、、課題がありますが、、、単純に所要時間だけで考えても、、、、急速充電で、少なくとも10分以内に80%充電ができないと普及段階には至らないように思ってしまいます。

そうなると、、、50kWhで1時間ですから、、、これの更に6倍の充電量となると300kWh必要です。

それと、、、電力の仕入コストをどうやって下げて、利益を確保するか。これも検討の余地がありますね。

幸いにガソリンスタンドはスペースが確保できるので、、、屋根に「太陽光発電」「風力発電」の設置にてクリーンな電力を確保はできそうですが、、、発電量は足りないでしょう。

不足する電力は、、、、電力会社から調達することになるため、、、そもそもの「急速充電ステーション」として機能するほど、、、簡単にはいかなそうです。

それでは、、、、本当に「ガソリンスタンドに充電設備が普及しない」のでしょうか。

しかし、、、世界的に「電気自動車へのシフト」していく流れは、ますます加速していきます。
そうなとなると、、、何れはガソリンを売れなくなりますよね。

そうなったら、、、ガソリンスタンドは、、、廃業になってしまいます。

では、、、ガソリンスタンドは、、、どうするべきなのでしょうか。

それには、、、「ガソリンスタンドの進化」が必要になると考えます。

「ガソリンスタンドの進化」といっても、、、果たしてどうするべきなのでしょうか。

ピンチはチャンスという言葉がありますが、、、「充電にかかる所要時間が長い」ことを逆手にとって、「新たなビジネスチャンスを掴む」という発想が必要ですね。。。そして「新たなガソリンスタンド」として生まれ変わり、、、ガソリンスタンドから「電気スタンド」となり、、、更には「街の郊外のステーション」と進化をしていければよいのではないでしょうか。

「街の郊外のステーション」って、、、具体的には、何をどうすればいいのでしょうか。

実際にこのような会話が為されたか、否かは定かではありませんが、、、昨年2021年5月20日にENEOSとNECが協業を発表しています。

その発表の内容とは、、、eneosのニュースリリースより以下抜粋です。

「サービスステーションを中心とした電動車両の充電ネットワーク拡充に向けた協業検討開始」

現在、地球温暖化問題の深刻化を受け脱炭素化が世界的な潮流となる中、日本国内においても 脱炭素化につながる電動車両のさらなる普及が想定されております。
ENEOSは、グループの2040年長期ビジョンにおいて、サービスステーション(以下 「SS」)を、地域の皆様にモビリティ関連や生活関連のサービスをトータルで提供できる拠点 とすべく、SSの生活プラットフォーム化を掲げております(参考1)。そのために、電動車両の 普及を見据えた充電サービスは不可欠であり、SSネットワークを活かしたENEOSなら ではの高い利便性と競争力のある充電サービスの創出を目指しております。

参考1.SSを起点とした次世代エネルギー供給・地域サービス
ENEOSプラットフォーム

これは、、、まさに「ガソリンスタンドの進化」ですね。
ガソリンスタンドを「リアルプラットフォーム(SSネットワーク)」という拠点として、移動に関する「モビリティサービス」と暮らしをサポートする「ライフサポートサービス」を展開しようとしているようです。

また、この「リアルプラットフォーム(SSネットワーク)」を支える技術が「デジタルプラットフォーム」であり、NECが提供することで協業をしていくのでしょう。

■モビリティサービス
・カーリース
・カーシェア
・デリバリーカーシェア
・EV充電

■ライフサポートサービス
・複合店
・宅配ランドリー
・小口配送
・ハウスクリーニング
・家事代行

ここまで、、、進化すると、、、もはやガソリンスタンドではないですね。
それこそ、、、「街の郊外のステーション」ではないでしょうか。
※「街のホットステーション」だとローソンになっちゃいますからね。

モビリティサービスは、eneosの本業との関連性も高い多角化なのでシナジー効果も高そうです。
また、ライフサポートサービスは、、、ぱっと見では微妙な感じ(クルマとの親和性は?)もします。
しかし、、、ライフサポートでも宅配ランドリーや小口配送ではクルマも使うことから、、、シナジー効果がありそうですよね。ランドリーも「宅配」を付けていることが重要なのでしょう。

あとは、、、ライフサポートサービスにある「複合店」次第ですかね。
ここでは、、、充電時間を気にせずに過ごせる複合店。充電が必要となる利用シーンで立ち寄りたいお店であれば、、、シナジー効果が期待できそうです。

これは、、、そのガソリンスタンドの立地に大きく影響することになるので、誘致する複合店は幅広く・複数の選択肢がないと、、、期待するシナジー効果が得られないと感じます。例えば、飲食店を誘致するなら「人の好みに合わせると、、、地域性を考慮すると、、、、複数店舗の出店(フードコート?)が必要」だと思います。

そうなると、、、もともと長時間駐車する施設に急速充電を設置したほうが、、、効果的かもしれません。例えば、、、「大型ショッピングモール」などですね。これならショッピングを楽しんでいる間に充電が完了しています。

あとは、、、電気自動車の普及に欠かせないのは、、、家庭用(特にマンションなどの集合住宅)での充電設備の普及を急ぐことだと思います。家庭用なら、、、夜間などのクルマを未使用の時間帯に充電すれば時間がかかっても寝ている間に充電が終わるし、深夜帯の電気代なら安くもなります。

ここでは、、、戸建てやマンションに充電設備を設置した場合のメリットを簡単にまとめます。

《戸建てやマンション充電のメリット》
・急速充電器の高性能化(充電スピードの短縮)と電力契約
・週末だけなら3kWでも可能。仕事でクルマを使うなら6kWは必要。
・時間帯を予約して充電することで深夜電力を活用し、低コストも可能。
・戸建てやマンションのほか、月極め駐車場の設置もよい。

新築だけではなく、既築マンションへの導入がどれだけ進むか。
これが電気自動車ならびに充電設備の普及のカギになるのではないかと思います。

それでは、、、今回はここまで。

「完全電気自動車が普及するための課題」の第2弾では「技術的な革新」を、そして第3弾では「法的整備」の課題について掘り下げていきます。