電気自動車の普及率の低さと普及するための課題(法的整備)

電気自動車の普及率の低さと普及するための課題(法的整備)

前回までの記事では、電気自動車が普及するのに解決しなければならない課題のうち、、、「技術的な革新」に関する課題を掘り下げていきました。しかし、、、掘り下げていくうちに課題だと思っていた「航続距離の短さ」やら「車体重量の重さ」は問題ないことが分かり、、、本当に必要なのは、、、充電スポットの普及であることが分かりました。 それでは、、、今回の記事では、最後となる「法的整備」について、掘り下げていきます。 これまでの電気自動車に関する記事(以下に記載)で、関連性が高いものを以下にあげました。 本記事の理解が更に進むと思いますので、お時間あるときに読んでいただけると、幸いです。

■これまでの電気自動車に関する記事リンク
これからのMINIの電動化について考えてみる
電気自動車の分かりにくい分類を図表で整理。EV化に必要な技術とは?
電気自動車の普及率の低さと普及するための課題(インフラ整備)
電気自動車の普及率の低さと普及するための課題(技術的な革新)
電気自動車の普及率の低さと普及するための課題(法的整備)

完全電気自動車が普及するための課題(法的整備)

まずは前回までの振り返りです。
完全電気自動車が普及するための課題として以下に記載する課題をクリアする必要があります。

《インフラ整備》
・充電ステーションの普及
・充電時間の短縮(急速充電器の高性能化と電力契約)
・電力不足の懸念
《技術的な革新》
・電気自動車の軽量化
・航続距離をガソリン並みに
・車両価格の低価格化

《法的整備》
・電気自動車を買い替えやすくするためにより一層の減税や補助。
・ゼロエミッション
・販売規制
それでは、、、今回は最終章として、、、法的整備となります。 エコカー減税やらグリーン税制やらの「減税」などの法律から、、、ガソリン車などの内燃機関を搭載するクルマの販売規制など電気自動車を取り巻く法的整備について掘り下げていきます。

法的整備に関する課題

それでは、、、法的整備に関する課題として主なものは以下のものがあげられます。

《法的整備》
・電気自動車を買い替えやすくするためにより一層の減税や補助。
・ゼロエミッション
・販売規制

そこで、、完全電気自動車が普及するために世界各国がとっている法的整備はどのような状況でしょうか。
自動車が基幹産業となっている米国やドイツ、イギリス、フランス、中国などの状況をみてみましょう。

国・地域規制開始内燃機関ハイブリッド概要
米国(カリフォルニア州)2035年販売禁止販売禁止いわゆるゼロエミッション規制。2035年までに排ガスを排出する自動車の新車販売を段階的に禁止する。
中国2035年販売禁止規制なし2035年までに新車販売をすべて環境適応車(ハイブリッド含む)にする方向で検討。
ドイツ2030年販売禁止規制なし2035年までの内燃機関車の新車販売を禁止を参議院で可決。
イギリス2030年販売禁止販売禁止内燃機関車は2030年まで、ハイブリッド車は2035年までに販売を禁止。
フランス2040年販売禁止規制なし2035年までに内燃機関車の販売を禁止。

さてさて、、、世界の状況としては、米国は州によって異なりそうですし、欧州も国によって異なりますが、、、
上記の表からいえることをまとめると。

・基本的に内燃機関の自動車は2030年以降から販売禁止となる。
・ハイブリッドは国によって規制対象となるか、ならないかが異なる。

それでは、、、日本においては、、、どのような状況でしょうか。

日本でも、、、欧米諸国と同様に「〇〇年以降は電気自動車しか販売できない」といった法制度化を取り進め、強力なメッセージを打ち出す必要がありそうです。。。

それは、、、何故でしょうか?

その答えは、、、最近、、、CMで見かける機会が増えた、「トヨタイムズ」にあります。
これは、、、世界に誇る自動車産業の最大手トヨタの豊田社長に香川照之さんがインタビューするものです。

そこでの豊田社長の発言から、、、いろいろなことが読み取れます。

「トヨタは電気自動車にどこまで本気なのか?豊田社長インタビュー」(2022.01.11)

香川
選択肢のひとつとして、BEVも本気だということを訴える、と。そして他も本気だ、と。ガソリンも本気。FCEVも本気、PHEV(プラグインハイブリッド)も本気、と。

豊田
全部本気です。どの選択肢であろうと、我々は一生懸命やっています。

※世界最大手のTOYOTAのトヨタのコラム「トヨタイムズ」よりコメントを抜粋。

BMWは、、、MINIは、、、2030年初頭には全面的にフルEV(完全電気自動車)になることが決まっています。
トヨタは、、、何故にこのような発言になるのでしょうか。
時代に逆行しているようにも感じてしまいます。

・世界各国でハイブリッドの規制が異なり、販売を継続できる国があること。
・日本政府の方針が明確に出されていないから。出せないから。
・脱炭素の先進国と後進国とのギャップに需要があること。

だから、、、トヨタは「全部本気」ということです。(このような豊田社長の発言に繋がるのでしょう。)

全部本気とは、、、電気自動車も内燃機関車も燃料電池車もハイブリッド車も「全部本気」で取り組みするということです。

これが為せるのは、、、トヨタが業界トップの企業だからですね。
それはどういうことでしょうか?

このトヨタがとった「全部本気」戦略は、、、いわゆるフルライン戦略とか全方位戦略といわれる経営戦略の1つです。

米国の経営学者フィリップ・コトラーの競争地位別戦略の4分類「リーダー」「チャレンジャー」「フォロワー」「ニッチャー」があり、業界における地位により、それぞれとるべき戦略が異なるというものです。

このブログは経営戦略の講義が目的ではないので、、、さわり程度に。

《競争地位別戦略》
リーダー:全方位戦略(フルライン戦略)・・・・トヨタがとるべき戦略
チャレンジャー:差別化戦略
フォロワー:模倣戦略
ニッチャー:集中戦略

上記より、、、トヨタがとるべき戦略が「全方位戦略(フルライン戦略)」であることが分かりました。
では、、、このフルライン戦略とは、、、どういったものでしょうか。

用語集とかで調べると以下のように記載があります。

【フル・ライン戦略】
フル・ライン戦略とは、同一の製品ラインに属するすべてのセグメントに対する製品を製造し、市場全体を対象とする戦略。
フル・ライン戦略の目的は、関連性が高い製品の研究開発・製造・販売を行うことで、規模の経済性や各製品間のシナジー効果を実現し、競争優位性を確保することにある。
(引用抜粋:グロービス経営大学院)

ここでトヨタ社長の「全部本気」に話を戻すと、、、
繰り返しになりますが、、、「電気自動車も内燃機関車も燃料電池車もハイブリッド車も全部本気で取り込みする」ということです。

このトヨタの本気を「電気自動車のみ」に変更させるとなると大変なことになりそうですね。
これでは、、、日本政府が及び腰になるのも致し方ないのかもしれません。

それでは、、、これまでに電気自動車が普及するための課題について「インフラ整備」「技術的な革新」「法的整備」といった観点で、、、掘り下げてきましたが、、、ここで最後に衝撃の事実。。。。。

実は、これらの課題を解決しても本当の意味での「ゼロエミッションビークル」にはなれないということです。。。

この「ゼロエミッション」とは何でしょうか。。。ゼロ・エミッション(zero emission)とは、環境を汚染したり、気候を混乱させる廃棄物を排出しないエンジン、モーター、しくみ、または、その他のエネルギー源を指すようですが、細かいことは、、、以下の記事にまとめています。

ゼロエミッション(Zero Emission)とは

前回と今回で挙げた電気自動車が普及するための課題の解決は、電気自動車が普及するために必要最低限な事項ですが、、、これらの課題を解決するだけではダメなのです。「ゼロエミッションビークル」にはなれないのです。

それは、、、何故でしょうか。

ここでいう、、、「本当の意味でのゼロエミッションビークル」ですが、、、何故に完全電気自動車になって排気ガスを排出しなくなってもダメなのでしょうか。「ゼロエミッションビークル」になれないのでしょうか。

それには、、、電気自動車を充電するための「電気」そのものの「発電」が影響しています。

そう、、、この電気自動車を充電する電気を発電するのが、、、すべて「太陽光発電や風力発電のような再生可能エネルギーで発電」した「クリーンな電力」であれば、、、問題ありません。

しかし、、、日本の発電比率は、いまだに「火力発電中心の電源構成」となっています。

これを、、、日本の発電構成を「火力発電中心の電源構成」から「クリーン電力中心の電源構成に切り替える」ことが必要になります。

ようは、バッテリー式電気自動車(BEV)に充電する電気が「火力発電」では、、、結局のところ地球環境にやさしくないので、、、意味がないですよね。

しかしながら、、、日本は島国で国土も狭く太陽光発電や風力発電といった広大な土地を必要とする発電所の設置にも限界があるため、現在の火力発電の電力を賄うことは難しい状況にあります。(最近では洋上風力発電などもありますが、、、これにも限界があります。)

そこで、、、日本政府は、原子力発電(原子力発電はCO2を排出しない)に頼ろうとしています。

日本政府は、、、福島の原発事故の悲劇を忘れてしまったのでしょうか。同じ過ちを繰り返すつもりなのでしょうか。
まったく、、、反省が生きていないとも感じます。

欧米諸国でもすでに「脱原発」を達成している国もあります。
これに見習い、、、日本政府も「脱原発・脱炭素」の達成を表明できるように、、、どうすればよいのか。

その一つの答えは、、、火力発電所や原子力発電所を廃止し、、、「ピュア水素発電所(LNGなどを使わず、水素のみの発電)」へ切り替えていくような施策が必要なのではないでしょうか?